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クオータ制導入で女性国会議員数はどうなる〜議員連盟の中間報告をシミュレーション〜

クオータ制

政府は、5年後の2020年までに、社会のあらゆる分野において指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%にすることを目標にするとしています。
そして「指導的地位」のトップには議会議員を掲げています。

以前書きましましたが、日本の女性議員比率は世界的に見ると際立って低く、先進国であるOECD諸国の中でダントツの最下位です。

国別女性国会議員比率ランキング〜クオータ制を提案します〜

2014年の総選挙の結果、衆議院475議席のうち女性は45名で9.5%です。
小選挙区だけでみると、定数295名のうちなんと女性はたった18名です。せっかくなので記事の最後に全員載せますね。

2014衆議院議員男女構成比率
2014衆議院議員男女構成比率

 

2020年30%の目標は、実は2003年に出されていたものです(閣議決定は2010年)。しかし、国会においては今まで何も対策が取られませんでした。
ここにきてようやく女性議員を増やそうとする動きが出てきたようです。
「女性の政治参画推進法案」(仮称)の中間報告がまとまってきました。

女性国会議員の割合を高めることを目指す超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」は30日、中間報告をまとめた。

各政党の公認候補が「原則として男女同数となるよう配慮する」との「クオータ制」に沿った規定を公職選挙法に新設することや、衆院選の比例代表名簿の登載方法を変更して比例復活当選者の半分程度を女性とすることなどを盛り込んだ。

(毎日新聞 2015年06月30日)

 

提言にあるように、「衆院選の比例代表名簿の登載方法を変更して比例復活当選者の半分程度を女性とする」政策が実現したらどうなるか。実際にどのように当選者が変わってくるのかシミュレーションしてみました。

有望な小選挙区の候補者を調整するのは、当初はおそらく著しく困難です。
政治家が、選挙区の公認を命がけで守ることは、政治に詳しい方なら容易に理解できると思います。
徐々に変わってくるとしても、しばらくの間、小選挙区の当選者にはそれほど影響が無いと考えます。
政党は比例区や情勢が厳しい選挙区の候補者で男女比率を調整すると思われますので、小選挙区は現状で見積もります。

 

惜敗率順に男女交互にすると20%

2014年の衆院選挙では、比例区で当選した男性は153名、女性は27名でした。
選挙結果をもとに議席数をシミュレーションすると、まず、従来のように惜敗率順の名簿で男女交互に並べ直した場合は、男性103名、女性77名になりました。
女性議員は50人アップの激増ですが、小選挙区で当選している女性はわずか18人ですから、全女性衆議院議員数は95名にすぎず、全体に占める割合はまだ20%です。
なお、女性候補者自体がだいぶ少なく、この時点で実数が足りませんでした。
比例名簿に登録する女性候補をかなり増やさないといけないことがわかりました。

男女構成比率予想(惜敗率)
衆議院議員男女構成比率予想惜敗率

 

女性を優先すると25%

次に女性を優先して男女交互に名簿搭載すると、議席数は男性77名、女性103名となり、男女数は惜敗率順に並べた結果と男女数がちょうど逆転します。さらに劇的な変化ですが、それでも合計は121名。全体で25%にとどまり、政府目標の30%には遠く及びません。

男女構成比率予想(女性優遇)
衆議院議員男女構成比率予想女性優遇

 

比例区をすべて女性にすると41%

もうめちゃくちゃですが、比例区をすべて女性議員にしてみます。
そうすると、合計で女性衆議院議員は198名になり、やっと41%です。

 

今回の中間報告を元に考えると、もしこれが実際に実行できたとしても、衆議院議員の女性比率はひとまず20%から最大でも25%にとどまります。

目標ですから「一定の成果を上げた」と、よく聞くフレーズが使われることになるのでしょう。

しかし、政府目標の30%という数値は、根拠が無いわけではありません。
「クリティカル・マス」という、一定の変化を表すための臨界点であり、それ以下では十分な効果が無いと言われる目安です。
ですから、この目標をきちんと達成することには大きな意味があるのです。

まあでも、今までがひどすぎたわけで、かなりの成果と言えなくはありません。2020年までの目標は達成できなくても、さらにゆるやかに改善していくことも期待できます。

それよりも、そもそも問題なのは、選挙制度を改革するのが現職の国会議員だということです。何もせず放置されている理由もそこにあるのでしょう。
自民党はともかく、野党議員のほとんどは小選挙区では落選し、比例区から復活で当選してきていますから、野党議員の相当数が女性と入れ替わりで落選することになります。そんな変更を議員が簡単に受け入れるとは思えませんよね。

そう考えると、世界的にはまだ最低レベルである20-25%への改善でも、相当に難しい改革になるのだと感じます。
誰が、どの政党が、改革に抵抗していくのかを注視していきたいと思います。

 

小選挙区選出女性衆議院議員一覧

都道府県 人数 議員名
北海道 1 中川 郁子(自民)
青森県 0
岩手県 0
宮城県 0
秋田県 0
山形県 1 加藤鮎子(自民)
福島県 0
茨城県 0
栃木県 0
群馬県 1 小渕 優子(自民)
埼玉県 2 豊田 真由子(自民)
土屋 品子(自民)
千葉県 0
東京都 3 山田 美樹(自民)
小池 百合子(自民)
松島 みどり(自民)
神奈川県 1 牧島 かれん(自民)
新潟県 1 金子 恵美(自民)
富山県 0
石川県 0
福井県 1 稲田 朋美(自民)
山梨県 0
長野県 0
岐阜県 1 野田 聖子(自民)
静岡県 1 上川 陽子(自民)
愛知県 1 山尾 志桜里(民主)
三重県 0
滋賀県 0
京都府 0
大阪府 3 渡嘉敷 奈緒美(自民)
辻元 清美(民主)
佐藤ゆかり(自民)
兵庫県 0
奈良県 1 高市 早苗(自民)
和歌山県 0
鳥取県 0
島根県 0
岡山県 0
広島県 0
山口県 0
徳島県 0
香川県 0
愛媛県 0
高知県 0
福岡県 0
佐賀県 0
長崎県 0
熊本県 0
大分県 0
宮崎県 0
鹿児島県 0
沖縄県 0
合計 18 6%
男女合計 295 100%

 

シミュレーション計算結果の資料です(PDF)

女性国会議員数PDF

 

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