2、どうしてこんなに子供が産まれないのか ②

4)少子化は経済問題だ!

家族社会学者の山田昌弘は、成人後、学卒後も親と同居し続ける未婚者を「パラサイトシングル」と命名しましたが、こういう人たちの存在も、少子化の原因のひとつになっていると言われています。

経済が成長していけば、年齢が高くなるにつれ収入が増えていきますが、経済の成長が低迷することにより、雇用環境も悪化し、収入が伸びていかなかったり、失業や非正規雇用の継続ということになります。

パラサイトシングルがなぜ増えているかというと、経済状況が悪化したままだからです。

国に変わって、親が社会保障をしているような状態と言えます。

親が、成人後も子供を自宅で扶養するということは、欧米ではあまり考えられません。日本に特有な文化と言えるようです。
欧米では、成人したら子供は家を出るのが当然です。そして、ルームシェアという習慣があります。
ひとりで暮らすのが経済的に難しい場合の暮らし方に選択肢が多いようです。
同棲なども特に問題視されず、未婚のまま出産することもそれほど珍しくないので、多様な家族のかたちがあります。

いずれにしても、日本の場合は多くの人が、将来にわたり十分な収入が得られる見込みがなかったりすることにより、結婚できず親元にとどまります。それが長期化することにより、レジャーや消費等にまわす費用があることから、ますます結婚に対する期待値が高くなるという悪循環です。

未婚を減らすには、現在の経済状況の改善とともに、将来的に明るい見通しが社会に立てられるようにすることがまず第一でしょう。

5)子どもが欲しくないのか?

合計特殊出生率が1.39と低迷しているわけですが、それでは結婚した夫婦が子供をのぞんでいないかと言うと、グラフ9をみるとそうではないことがわかります。
理想の子ども数や予定子ども数は、30年以上あまり大きくは変わっていないようです。

 

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グラフ9(出生動向基本調査夫婦調査 国立社会保障・人口問題研究所 2011年)

 

前の章にもあるように、近年は未婚の人が多くなり、結婚する場合でも、初婚年齢がとても高くなって晩婚化の傾向になってきています。
それとともに、自然と出産年齢も高くなりますから、女性の身体的理由からくる30代後半からの妊娠確率の低下とともに、たくさんの子供を産むのが難しくなっているようです。

グラフ10からわかるように、若い夫婦には、経済的理由をあげる人が多いですが、30代になると年齢や健康上の理由で子供が出来ないと回答する人の割合が急増します。

つまり、子供が2人以上欲しいと考えていても、結婚、出産が遅れ気味になったために、希望の人数が達成出来ない人が多くなっていると考えられます。

 

妻の年齢別、予定子供数が実現出来ない可能性の理由
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グラフ10(出生動向基本調査夫婦調査 国立社会保障・人口問題研究所 2011年)

 

6)結婚・出産を決断する「期待」とは

結婚を決断する時に比較するのは、今の自分が良くなるのか、悪くなるのかということです。
特に女性にとっては、結婚することにより、現状より経済的に良くなる見通しがないと、なかなか結婚に踏み切れません。
ですから、その見通しは自分の親との比較が多くなるわけですが、親の世代の方が現在の世代より裕福だと(経済成長がマイナスまたは小さいと)「期待値」が高くなっているので、なかなか「適当な相手」が見つからないことになります。

出産についても同じことが言えます。
自分の産んだ子どもが、自分より良い環境で育つ見込みがないと、なかなか出産を決断できなくなります。
自分がどのように育ってきたのか、経済的な状況だったり、親にどのように扱われてきたのか(兄弟の数など)、塾に通う、ピアノを習う、住環境等々、様々な環境です。これも、主に親の世代との比較になります。

つまり、親の世代より経済・環境などが良くならない時代には、少子化が進むのではないかという予想ができます。
近頃は、世代間格差が問題視されていますが、

少子化問題と世代間格差問題はとても関連性の高い問題

と言えるのです。

 

次は このままだとどうなる日本①

 

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